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シュヴァルの理想宮とCGM

コミケで感じたCGMの面白さ

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先日コミケを見に行った。出品者も参加者もみな良い顔をしていた。コミケに行くたびに、やはりCGMは面白いなと感じる。CGMとは、(Consumer Generated Media)の略称で、プロではなくアマチュアのクリエイターが、自分の作りたい物を作って販売して行くモデルのことだ。同人活動と言った方が理解しやすいのかも知れない。
先の話で、アマチュアとプロを比較したが、プロは必ずしも作りたい物を作れるわけではない。市場やクライアントの要望に答えつつ、その制約の中で最大限自分の味を出していくのがプロに求められる能力で、アマチュアの様に自分が好きなように作れるわけではない。
確かに表現技術はプロの方が凄いが、だからと言って作品の面白さは、表現技術のみで決まるわけではない。

シュヴァルの理想宮

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コミケで出品される作品を見ながら、ふと、シュヴァルの理想宮を思い出した。
シュヴァルの理想宮とは、フランスにある建築物のことである。凄く奇妙な外観をしており、また普通の建築物とは違う作られ方をしている。
普通の建築物は、建築主がいて、建築家や大工に作りたい物を注文する。建築家や大工はその注文に応じて、機能性や建築強度を満たしながら、建築主に要望に答えて行く。 しかし、シュヴァルの理想宮はシュヴァルと言う郵便配達員が、一人で作り上げたものだ。

wikipediaにシュヴァルの理想宮の項目がある。その項目を参考にしながら、彼がその宮殿を作った経緯をまとめよう。

彼曰く、1879年のある日ソロバン玉が重なったような形をした石につまずいたそうだ。その石にインスピレーションを得て、配達の途中にめぼしい石を見つけては、その石を自宅の庭先に積み上げると言う行為を重ねる。
33年後の1912年にその建築は終了した。村人からは変人の所業と白い目で見られたが、徐々にマスコミから注目されるようになり、見物客が訪れるようになった。

専門知識を学んだプロから見れば、奇妙で突っ込みどころの多い建築だが、外観は極めて面白い。そしてさらに面白いのが別に彼は何か儲けたいがためにこの奇妙な建築物を作ったわけではないと言うことだ(それゆえに変人の所業と言われたわけであるが)。
ただインスピレーションが沸くままに何か奇妙なものを作っていたら、幸運にも他の人にも認められるようになったようだ。

変人の所業と創作

コミケで売られる多くの同人誌もこの様な面白さを持ち合わせている。多くの同人誌を作るサークルは赤字だ。常人には理解できない奇妙な物をテーマにした同人誌もある。行旅死亡人をテーマにした同人誌とか。それらの同人誌には、訳の分からない情念が詰まっている。私はその表現やそれらを作った人そのものが面白いと感じる。冷静に考えれば同人誌を作ったからと言って儲かるわけでも多くの人から評価されるわけでもない。それでも彼らは作り続ける。
その創作態度は、プロの作り手には採れない。上に書いたが、プロの作り手は市場やクライアントの制約の中で創作をしなければならない。
コミケに行って感動するのは、彼らの表現技術が上手いからと言うよりは、周りに人から見たら一見無価値に見える物に物凄く情熱を注いでいるからだろう。

Category: [作品][展示会][] - 06:32:58

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*1 flickrへのリンク、http://www.flickr.com/photos/misterdi/3404482115/

添付ファイル: filecomike.jpg 10084件 [詳細] fileobject2.jpg 10233件 [詳細]

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Last-modified: 2015-02-01 (日) 14:38:24 (3540d)