書評

タイトルリナックスの革命
副題ハッカー倫理とネット社会の精神
著者ペッカ ヒマネン (著), リーナス トーバルズ (著), マニュエル カステル (著)
訳者安原 和見,山形 浩生
第1部労働倫理・楽しくなくっちゃ、仕事じゃない―あなたは何のために働くか.働くことの意味
第2部金銭倫理・人生の目的は、お金だけじゃない―あなたにとってお金とは何か.お金の意味
第3部ネット倫理・プライバシー、表現の自由―ネットワーク社会のルールとは何か

この本は、アマゾンのレビューにもあったとおり、リナックスについて何か書いてあると言うよりは、むしろ、ハッカー倫理について、書いてある。ヒマネンは、ハッカー倫理が未来のライフスタイルになるという。彼が、参照したのは、ウェーバーの「プロテスタンティズムと資本主義の精神」だ。副題はそれをもじったものになっている。
彼は、現在のワークスタイル、強い責任感、勤勉さ、時間の最適な使用、労働の場所と生活場所の区別、などが修道院の生活をベースとしていると述べる(これは、プロテスタンティズムの倫理が資本主義の価値観の萌芽となったと指摘するウェーバーと同じものだ)。
初期キリスト教では、安息の日曜日に価値があった。修道院は、むしろ労働する金曜日に価値をおいた。そして現在社会でも、同じように余暇よりも労働に価値があると見なしている。
しかし、ハッカーのワークスタイルはそれと異なっているというのが彼の主張だ。
ハッカー倫理が奇妙なのは、プログラムは、ある面遊びだと言うことだ。そして、その遊びが金銭になると言う点で、他の労働と大きく異なっている。LinuxはLinusがminixの学習用に開発した。多くの開発者がそれは面白いと考えて、「遊び」として開発に参加した。それが結果的に大きな市場を形作った。
著者の山形が指摘するように、この倫理観、つまり「余暇」が、仕事になる倫理観は、これから他の産業に広がるかはこの本では論じられていない。資本主義の価値観が、徐々に浸透していったように、ハッカー倫理が他の職業に徐々に浸透していくのか、はたまた局所的な現象で終わるのか、今後、何十年単位で見ていかなければならないだろう。
ちなみに、余暇が仕事になる、或いは強い影響力を持つという主張は、岡田 斗司夫の「ぼくらの洗脳社会」と強い関係性を持っている。洗脳社会においては、金銭を多く持つ人より、他者に対して強い影響力を持つ人の方が、より尊敬されるというのが岡田の主張だ。他者に対して影響力を持つためには、新しい価値観を作るのが、最も簡単だ。それは、例えば「ファミコンの裏技を見つけること」を「遊びとする」と言うことも含まれる。
彼らの主張が実現するかどうが分からない(であるがこそ未来予測と呼べるのだが)。けれども、Linuxの成功が一つの実例になっていることは確かだ。


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Last-modified: 2015-02-01 (日) 14:38:24 (931d)