書評

書名ぼくたちの洗脳社会パラダイムシフトの時代(今、私たちの社会は大きく変化している)
著者岡田斗司夫マルチメディア中世(それはなぜか)
出版社朝日新聞社洗脳社会とは何か(変化して社会はどうなるか)
出版年1995価値観を選択する社会(その結果、私たち個人はどうなるのか)
新世界への勇気(でも大丈夫)

この本は、その刺激的な題名に反してまともな文明批評の本だ。文明批評などのと書くと「今の世の中間違っている!!」みたいな手合いの本に聞こえるが、そうではない。 情報通信技術の発達が社会発展にどのような影響を与え、その結果社会がどう変化するのかについて(根っこの部分はかなりまともに論理展開をしていながら)優しい口調で書かれている。ちなみに各章の赤い文字は、岡田自身がこの章は何について書かれたのか丁寧にまとめてくれている(凄く親切→本当はやって当たり前だけど哲学者とか死んでもやらないと思う))。この本を読むまで岡田斗司夫は単なる変人だと思っていたけど、読んでからは論理展開のしっかりした変な人だと考えを改めさせられた。

情報通信の変化が社会を変えると言われて久しいけど、「じゃあ、具体的にどう変えるのか」。岡田はその疑問から出発する。良く雑誌とかで目にする「マルチメディアで花開くすばらしい未来」みたいな特集は、こう書かれている。「インターネットや3Dソフトを駆使した効果的なビジネス・プレゼンテーション」「コンピュータ制御による快適な家」「バーチャルリアリティショッピング」そして例えば2010年の生活みたいな文章で締めくくったりする。その生活は、結局今までの大量消費をベースにした生活を技術だけ進歩させて書いたような物になっている。岡田はこの未来予想のビジョン自体に、違和感を感じる。 「何故、バブル期のヤンエグ(もはや死語、けれど、ビットバレーとかの乱痴気騒ぎを見ているとあながち死語ではないかも)みたいな生活を2010年にもなって続けているのか?」

岡田は、技術の進歩が、私たちが日頃行っている何が良くて何が悪いかと言った価値判断自体を変化させると主張する。この認識だけでも凡百の「IT経済が切り開く未来」みたいな本を蹴散らすくらいの価値がある。 情報通信技術をベースにした「中世のような」社会が再び到来する。「資源不足・情報余り」の時代を迎える。岡田はこう主張する。そしてたぶんそうなる可能性は高い。消費は美徳という意識から消費は悪と言う意識に変化していく公算もかなりある。 資本主義から洗脳(どの様な価値観を持ち、それを使って他者に影響を与えるかと言う事がもっとも重要な価値観)主義へと変わる。

ちょっと論理的な穴が無いとは言えないけど(パソコン自身も大量に電力を消費するし・・・)、資本主義(高度消費社会と言い換えても良い)が、これから100年のスパンで続くと言う理論よりかなりましな理論だ。ちょっと書評で書くにはスペースが足らなくなるくらい示唆に富んだ本なので、強引にまとめることはよします。

ちなみに蛇足ですけど文中で想定される仮想企業「SDL」が何とも「Linux」のイメージに重なること(ボランティアによって運営される、けど一般の製品にひけをとらない)を書き加えておきます(つまり、結構まともに予測が当たっていると言うこと)。


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Last-modified: 2015-02-01 (日) 14:38:23 (929d)