そろばんに賭けた青春 †
目次 †
- 逆転
- 脱皮
- 勝つ喜びを知る
- 無欲の勝利、そして厚い壁の前で、
- 負けて悔しい、花いちもんめ
- 弱点を克服して手にした栄冠
- 因縁の対決
- 史上初、満点で飾る花道
感想 †
珠算二世永世名人西田三智子を主人公にした自伝漫画。良くある金メダリストなどの自伝漫画の珠算二世永世名人バージョン。
珠算という一見大変地味な競技(?)を、手に汗握る一大活劇にしてて大変面白い。珠算がこんなに深い世界だったなんて!!
主人公西田は、幼い頃から多少ぽっちゃりしており、運動が苦手だった。両親の"これだけは誰にも負けないものを身につけさせよう"との考えから、ソロバンを習い始める。見る見る才能を開花させ、珠算日本一になる。最終的に、永世名人位を与えられる。と言ったお話。
結構逸話が多く、読み応えがある。例えばこんな一節。
主人公、西田が、クーラーが苦手で、指に影響を出さないために、手袋をして会場に入り試合直前で手袋を脱ぐ。
珠算のような地味な分野でも、トップ同士の戦いは結構熾烈を極めていて、クーラーの影響で指の調子が狂うだけで勝敗に影響が出てしまう。傍目にはただパチパチやっている様に見えて、その裏側では各選手の心理戦があったりとか、意外とシビアなやりとりが続いている様子がうかがえる。
物語中、松村式算法という計算方法が出てきた。計算スピードを上げるために、上級者は独自の演算アルゴリズムすら開発する(漫画中にアルゴリズムを説明しているが私は理解できていない)。
この本は随所に、そろばんの奥深さをかいま見せる記述が多いのだが、特に西田がスランプから抜け出そうともがいている時の表現はふるっている。
かきだそう。
ソロバンにおける暗算力の上達とは”右脳”の働きを活性化させ、豊かにさせることで可能になってくる。
西田が、川面の流れに、ソロバンをイメージしたように、暗算力の上達は”創造力””抽象力””推測力”といった感覚の上達と一体化したものなのである。
ことに西田のように、一流の選手ともなると、そのソロバン力が一般の人よりもはるかに進んでいるために、飛行機でいえばマッハ(音速の壁)を越えるような苦しみを味わわなければ、イメージの中の指先の速さとリズムは肉体の指先の持つ速さとリズムの技術を越えられないのである。
西田の挑んだ暗算力とは、自分の肉体を越えた創造力を築くことだったである−。
なかなか凄い記述だ。多分チャクラも開いている。暗算力の強化というよりは悟りすら開きかけてる感もある。
珠算などでも、一流の選手になる頃には、ある意味神の領域に近づいて行くのだろう。
もし今、西田さんにあったら、多分普通のおばちゃんだろうけど、彼女がなんだかよく分からない高みに到達してそこから世界を眺めた経験を持っていると言うことが、微妙におかしい。
地味な乙女達が青春の全てをかなぐり捨てて、無心にそろばんと向き合う姿が、ある意味感動すら与える。
若い時期に、色々と楽しいことをかなぐり捨てて、ただ一つのことに集中するというのは、若い頃にはばかばかしく思えても、年を取ると貴重な財産になっていくのかも知れない。
2桁の加減算すら危うい私は、11桁の四則計算とかを暗算でこなす人々とかもう得体の知れない神レベルだ。
ググったら、紅白歌合戦の際、得点集計とかしていた。なんか、子供の100メートル走に、カールルイス出すくらい、無駄にハイスペックな得点集計だ。
- へえ。 ところで、こんな本、どこからさがしてくるんですか? -- sugi2000
- 古本屋さんにありました。 -- shiba
- 読むだけで、ちょっと賢くなった気がしますね。 -- rihito
- 11桁暗算の世界は、あこがれます。私、2桁の足し算もおぼつかないので。 -- shiba